団体信用生命保険と生命保険の違い

住宅ローンを借りる際、団体生命保険(団信)へ加入するのが一般的です。保険会社がやっている生命保険とどう違うのか?今日はその辺りのことをお伝えします。
(実をいうと、保険販売員の中にはこのことを知らない人もいます)

要旨

団体信用生命保険に加入すれば、ふつうの生命保険に加入する必要がない・・・というわけではありません。逆もまたしかり。
団信加入時は、生命保険を見直す良い機会です。それぞれ目的が異なるのでポイントをおさえて、保険選びで失敗しないようにしましょう。

団体信用生命保険とは?

万一の時、住宅ローンが完済される

団体信用生命保険とは、住宅ローンの契約者が死亡(または高度障害状態)になった際に、融資の担保になるものです。万一の際、保険会社から金融機関に残りのローンの返済が行われる仕組みです。住宅ローン専用の生命保険ですね。「団信」と言われたりします。

住宅ローンは長期にわたって返済するものなので、返済期間中に契約者の身にトラブルが起きる可能性もあります。そのため、住宅ローンを契約する場合は、万が一に備えて「団体信用生命保険」に加入するのが一般的なのです。

保障を厚くするには?

団体信用生命保険の保障対象は、死亡または高度障害状態に限られています。ただし、オプション(特約)を付けることで、日本人の死因で多い「がん・脳血管疾患・心疾患」といったいわゆる”三大疾病”についても保障範囲に含めることができます。

「三大疾病保障特約」に加入していると、万が一三大疾病のいずれかに罹患した際、残りの住宅ローンが保険会社から金融機関によって支払われます。
もちろん、保障範囲を広げることになるので、その分の保険料は上乗せされます。ソニー銀行は金利に0.2%上乗せ、りそな銀行は0.25%上乗せとなっています。(2021年3月時点)

必ず加入すべきなの?

結論からいうと、団信への加入は義務ではありません。加入を必須条件にする金融機関がある一方で、「フラット35」などは任意加入です。したがって、必ずしも団体信用生命保険に加入しなければ住宅ローンが借りられないというわけではないです。

ただし、団信に加入していなければ、ローン返済中に契約者が亡くなった場合、住宅ローンの残債を残された家族が返済し続けなければならないことになります。加入しないのなら、それなりのリスクヘッジは別で用意しておくべきです。

団体信用生命保険と生命保険との違い

保険金の受取人は誰?

ふつうの生命保険の保険金受取人は、被保険者の家族(配偶者もしくは子ども)です。一方で、団体信用生命保険は、ローンを借りている金融機関が受取人となります。
団信の場合、万一の際は被保険者の家族が保険金を受け取ってローンを支払うというわけではなく、保険金を受け取った金融機関が残っている住宅ローンの返済に直接充当する仕組みです。

一般的に、お金を他者から受け取った場合は、所得税や贈与税(死亡時なら相続税)といった税金がかかります。しかし、団信の場合は「住宅ローンの担保」という性質上、これらの税金は発生しません。

生命保険の見直しは必須

保険見直しのポイントは、「掛けすぎないこと」と「目的を明確にすること」です。
生命保険の保障額は、大きければ良いというものではありません。保障額が大きければ、その分だけ月々の保険料も高くなるからです。

生命保険の加入目的は、「残された家族の生活保障」というのが一般的ですが、その中には住居費も含まれているはずです。団信に加入したことで、万一の際の住居費は心配しなくて良くなりますから、その分の保障は減らすことができます。
団信の加入と、加入している生命保険の見直しは同時に行いましょう。似たような話なら、一気にやってしまった方が効率的です。

保険料はいくら?

団信は無料?

ふつうの生命保険は、会社ごとに毎月(あるいは年1回)保険料が引き落とされるので、どこの会社にいくら払っているのかが明確です。
団信の場合は、「団体信用生命保険」という名目で引き落としされるのではなく、ローンといっしょに支払う仕組みです。一見すると、無料で入っているように思えるのですが、住宅ローンの金利の中に含まれていると考えて良いでしょう。

ただし、三大疾病などの特約保険料は、ローンの返済とは別に請求される場合もあります。申込の金融機関によって異なるので、契約時によく確認しましょう。

生命保険料控除の対象になる?

年末調整の時期になると、毎年でてくる生命保険料控除。団信の分もいっしょに控除できるかというと、そうではありません。
生命保険料控除の対象になるのは、「保険金受取人を自己または配偶者そのほかの親族とする、生命保険契約等」です。団信の場合、保険金の受取人は金融機関になるので、生命保険料控除の対象にはならないのです。

ワイド団信とは?

ふつうの生命保険と同様、団体信用生命保険にも健康状態の診査があります。過去に大きな病気をしたことがないか、今治療している病気はないか・・・団信に申し込む際は、健康状態についていくつか質問されます。健康状態に問題がなければ、すんなり申し込めるはずです。

一方で、大病の経験や持病の治療をしているケースでは、加入できないことも考えられます。以前はそこであきらめるしかなかったのですが、現在では疾病や持病があっても加入できるタイプの団体信用生命保険(「ワイド団信」)があります。

ワイド団信は、健康上の理由などで一般の団体信用生命保険には加入できない人のために、診査基準が少し緩くされた団体信用生命保険のことです。
診査基準が緩い分、保険料が高くなっていることを頭に入れておいてください。(一般的には0.2~0.3%ほど金利が上乗せになる)保障内容については、一般の団体信用生命保険と同じです。

ただし、診査基準が緩いといっても、必ず加入できるわけではないです。病気の種類や症状によっては、加入できない場合もあります。健康状態に不安がある方は、ワイド団信を取り扱っている金融機関を選び、診査基準を事前に把握しておきましょう。

他人に自分の健康状態を告げるのは抵抗があるかもしれませんが、契約の際には必ず聞かれることです。そうであれば、なおのこと早いタイミングで確認しておくべきです。

団体信用生命保険の注意点

万能ではない

団体信用生命保険が保障しているのは、加入者が「死亡もしくは高度障害状態」になった場合です。基本的には、ガンなどの重い病気の際、保険金がおりません。(そのために、オプションの「三大疾病特約」がある)

ただし、対象となる病気の範囲については細かく確認する必要があります。というのは、ひと口にがんといっても、「上皮内がん」だと保険金がおりない場合もあるからです。「脳血管疾患」なのか、それとも「脳梗塞」なのか。大事なポイントです。

どのようなケースであれば保険金がおりる/おりないのかをしっかりと把握しておきましょう。

長期間働けなくなったら?

団体信用生命保険では、病気の治療などで長期間休職する場合や、失業の場合は想定されていません。その間も、毎月の住宅ローンや生活費は支払い続ける必要がありますので、別の対策が必要です。

最近では働けなくなった時の備えとして、「就業不能保証付き」の団信を提供している金融機関もありますが、「就業不能状態」と一口に言っても、その定義はさまざまです。あなたが思っている就業不能状態と、団信側が想定している就業不能状態が違うことが多々あります。

(これに限った話ではないですが)保険金が受け取れる条件は何なのか?加入の際は、しっかりと確認しましょう。

まとめ

住宅ローンを申し込むと、ほとんどの金融機関では団体信用生命保険への加入が求められます。お伝えしたように、団体信用生命保険はあくまでも死亡と高度障害状態時の保障がメインです。

家族の生活費の保障や働けなくなった時の備えは、それとは別に用意しておく必要があることを頭に入れておいてください。


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